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RIDING

About MotoGP Riding

最近のMotoGPライディングについて その2

今年もMotoGPが開幕しました。
最近のMotoGPのライディングを見て、皆さんは何を感じ、どう思いますか?

バランスの取り方の違いが意味すること

 スライドコントロール時のバランスの取り方について書きましたが、バランスの取り方が変わったとはどういうことなのでしょう。
 WGP時代、日本人ライダーを含め大排気量バイクのライディングスタイルに合うライダーは、500㏄にステップアップするとすぐにトップ争いに絡んできました。でも最近のMotoGPに参戦する日本人ライダーはトップ争いに絡むこともなく、TVに映されるような活躍が殆どありません。これは以前のライダーよりも走りのレベルが下がって遅くなってしまったのでしょうか?
 確かにレベルが落ちているところがあるかもしれませんが、それでも彼らがWGPで500㏄マシンを走らせたら、きっと以前の日本人ライダーと遜色ない走りを見せてくれるでしょう。では、何故今のMotoGPでは日本人ライダーが活躍できないのでしょう?
 その理由の一つとして、今のMotoGPマシンを速く走らせるスライド走法に対応できていない事が考えられます。つまり、MotoGPマシンが持つトラクションコントロールの制御範囲内で走行していたのでは勝てないということでしょう。トラクションコントロールが無いバイクで身に付けたバランスの取り方のライディングに囚われたままでは、MotoGPマシンを大きく自在にスライドさせることが出来ないため、減速や旋回に有効に使うことができず、結果的に速く走らせることができないと考えられるからです。
 また、例えバランスの取り方の違いに気が付いたとしても、バランスの取り方を変えたライディングスタイルに変えることが簡単にできるとはとても思えません。頭の中で『トラクションコントロールの技術により簡単には滑らないので、転倒回避の為のバランス取りは不要』と理解できても、300km/h以上スピードが出る軽量かつ巨大パワーのMotoGPマシンの上で、いざトラクションコントロールの技術が無いバイクで身に付けたバランスの取り方を変えようとしても、防衛本能が働いて体がついてこないことは容易に推測できるからです。

 WGP時代、トップライダーのライディング技術はレース以外においても全てのライダーにとって有効で、習得出来れば有益でした。ですが、今のMotoGPライディングは、全てのライダーに有効な高いライディング技術というより、トラクションコントロール制御を有するバイクでの特殊なライディング技術と考えるべきなのかもしれません。最速を求めレースで勝つ為でもなければ、トラクションコントロールの制御範囲を超えてまでして乗る必要は全く無いと考えられるからです。
 トラクションコントロールという技術の進歩が招いた新たな時代です。今後、トップライダーのライディング技術によって、トラクションコントロールは日々改善されることでしょう。

トップライダーの凄さ

バレンティーノロッシの変化

 バレンティーノがヤマハに戻りトップ争いに再び絡むようになったのは、彼がこのバランスの取り方の違いに気付いてライディングスタイルを変更したからだと考えられます。このことに気付いたことも凄いと思いますが、既に完成していると思われる彼自身のライディングスタイルを変えられたことは更に驚きです。
 ホンダでRC211Vを走らせている時によくスライドさせていましたが、当時はリア周りの挙動を大きくさせてユニットプロリンクの動きを掴もうとしているのではと勝手な推測をしていました。当時はまだトラクションコントロールが導入されていなかったと思います。スライドさせてエンジンブレーキを逃がしながら、スライド走法について色々なことを探っていたのかもしれません。
 実際には、バレンティーノがバランスの取り方を変えようと思ってライディングスタイルを変更したとは思いませんが、彼が考えて行ったことは、結果的にバランスの取り方を変えたことになり500㏄時代のライディングスタイルと比べてみれば、この点が変わっていることは一目瞭然です。そして、バレンティーノが始めたブレーキング時の足出し(☜これについては後述)についても、スライドコントロールとバランスの取り方に大きく関係していると考えられます。
 やはり彼はレジェンドと呼ばれるだけの凄いライダーだと思います。

マルクマルケスのスライドコントロール

 マルケスのライディングで、声を上げてしまうほど驚きの転倒シーンがありました。それはチャンピオンを獲得した2014年R13サンマリノでの転倒だったと思います。バイクからマルケスが振り落とされた後も、あり得ないことにバイクは弧を描いて走行ライン上を滑っています。通常バイクは転倒するとコーナーの接線方向に外へ向かって真っすぐ滑って行きますが、この時の転倒はまさしくライダーが意図した方向に大きくバイクを滑らせた状態を、ライダー不在になった後もそのまま保っていたことを表しています。
  
 そんなマルケスですが、彼のスライドコントロールもまだ完全ではないと思わせたのは、転倒が多くチャンピオンが取れなかった2015年シーズンでした。肘を擦ることで倒し込みの限界は把握出来るようですが、スライドしすぎてしまった時にそのスライドをどうやって止めるか、或いはこれ以上大きくスライドさせてはいけないという限界をどうやって掴むかが難しいようで、それが彼にとってバイクに求めるものであり、スライドコントロールに必要なライディング技術のように感じます。
 2015年シーズンの走りを見るとよく分りますが、スライドし過ぎと推測される転倒後、2014年の転倒とは明らかに異なりバイクがコーナー接線方向に真っすぐ滑っていくのが分かります。スライドの限界が掴みづらく行き過ぎてしまう転倒で苦労している感じが見て取れます。この転倒に関しては、2017年R5フランスで、切り返しの時にフロントのスライドが止められずフロントを押すような状態で転倒するという、恐らくはマルケスにしか見ることのできない珍しい転倒でも判ります。

 逆に2017年最終戦バレンシアでは、フロントが滑って転倒しそうになるのを、内側の膝でバイクを起こして立て直すという技を見せています。通常滑って転倒するときは、バイクとライダーの滑る方向が異なるか、同方向でもバイクの方が速いためライダーと分離されるはずですが、これこそマルク自身がバイクを滑らせている証であり、スライドに与えたエネルギーの範囲内であれば、このような転倒回避が出来ることが見て取れます。

 マルケスのスライドコントロールの素晴らしさを証明していると思える数々のシーンです。

スライドコントロールを多用する走りは本当に速いのか?

 ここではマルケスに代表されるライディングに焦点を当てましたが、そもそもスライドコントロールを多用する走法が最も速いかどうかについては考える余地があるでしょう。
 WGPでは1980年代からスライドコントロールを駆使するライダーがチャンピオンになってきましたが、道具を使用するスポーツなので、技術の進歩や、レース距離、レギュレーション等色々な要素が関係する中で、結果的にそれらに一番適合したライディング方法が最も速かったという見方ができるからです。
 例えば1980年代中頃のフレディースペンサーは本当に速いライダーだったと思います。今でも史上最速のライダーはフレディーだと思っているWGPファンは大勢いることでしょう。そんな彼でも、手の故障で休んでいる(一時的な引退だった)間にラジアルタイヤの登場とその性能向上により、車体は鉄パイプからアルミチューブフレームへと変更され、バイクの技術の進歩が彼のライディングテクニックの差を埋めてしまったことで、フレディーが復活した時には、多くのライダーがフレディーのライディング技術が無くても彼と同じ速さで走れるようになってしまったと考察することが出来るからです。 
 バイクやタイヤの技術、レギュレーション、見た目の派手さやカッコよさなどから、今のトレンドはマルケスのライディングに始まったスライド走法に向かっていると思いますが、今後トラクションコントロールを含めたバイクやタイヤの技術の進歩によっては、他のライダーがマルケスのライディング技術を必要としなくても同じ速さで走れるような時代がすぐにも訪れるかもしれません。
 ロレンソの走りを見るとオーソドックスで派手なスライドはありません。そもそも滑っているということは、同時に無駄も発生していて、タイヤの耐久性にも影響があります。減速や向き変えのスライドコントロールにも最適なスリップ率があり、大きく派手なスライドを抑えた限りなく無駄のない走りをする方が、走行距離が長くなればなるほど速いことは十分に考えられます。そして、スライド走法であってもマルケスとバレンティーノではその走り方に違い(☜これについても後述)があるように、マルケスのスライド走法に固執することはなく、技術やレギュレーションに最適な走法を常々探ることで日本人ライダーにもきっとチャンスが巡ってくるでしょう。

to be continued
22,NOV,2017

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